包装紙のちから

2025年度前半のNHK朝ドラ「あんぱん」では、東京の老舗百貨店三越の包装紙の文字デザインが、主人公の夫の柳井嵩(やなせたかし氏がモデル)の手によることに触れていました。

栃木県にも、著名な作家の作品を包装紙にしている店がいくつかあります。私の身の周りを見回してみました。

まずこの写真の落合書店(本部:宇都宮市西1丁目4-2)のブックカバーは、版画家の川上澄生氏の作品です。ブックカバーの端に、「制作 川上澄生先生木版画」と記載されています。

横浜生まれの川上氏は、1921年に現在の宇都宮高校である栃木県立宇都宮中学校に教師として赴任し、そのころから版画制作を始めたといわれています。

そして次の写真は、書家で詩人の相田みつを氏による香雲堂(本店:足利市通4丁目2570)の 「しおり」です。若かりし日のみつを氏が香雲堂の包装紙としおりを作成したいきさつが、香雲堂のホームページにも書かれています。

足利銘菓『古印最中』にかよう相田みつをの心 – 香雲堂本店

包装紙は、商品を保護する目的のほかに、店のイメージを消費者に伝える働きをします。長年の間にはブランドイメージが構築され、消費者の購買意欲を高めることになります。私自身も、落合書店のブックカバーのデザインを見ると落ち着きますし、香雲堂の包装紙を見るだけで古印最中の甘いあんこの味が口の中に蘇ります。

最近、地球環境への配慮から包装紙を縮小する傾向もありますが、こんな話を知ると、まったく無くなってしまうのも残念な気がしてきます。

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